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2020.03.04

着物の前合わせが右前の理由は?

着物の前合わせが右前の理由は?

着物を右前で着るのは、現代では常識です。
しかし、右前・左前という言葉は、初心者にとってわかりにくいものでもあります。右前の意味や、なぜ左前で着用するのがいけないの解説しましょう。

着物の前合わせが右前になったのは奈良時代のこと

着物の着付け
着物は、中国から伝わった服装です。日本人が着物を着用し始めた頃、着物の着方に明確なルールは存在しませんでした。左前に着ていても、当時であれば支障はなかったものと思われます。

719年に着物の着用方法が法律で定められた

着物の着用は右前と決まったのは、衣服令と呼ばれる法律によるものです。当時の天皇が発表した法律には「どのような身分のものもすべて右前にするように」と書かれています。
それまでは中国でも左前に着用する方式が流行していましたが、左前は戦うときに便利な着装方法でもあり、胡人の服装でした。それゆえに身分の高いものからは嫌われ、右前が定着したようです。
中国で右前が流行しているのを見て、最新の着方として日本が取り入れたとする説が有力でしょう。

死装束を左前としたことも右前が定着した理由の1つ

着物の着装方法を右前に統一したこととはまた別に、日本では「左を上位とする考え方」がありました。たとえば、左大臣と右大臣では、左大臣のほうが地位が上ですよね。
亡くなった人は神や仏に近づくと言われ、上位である左前に着付ける風習が始まったのです。
左を上位とする考え方は「天皇は南を向いて玉座に座るのが正しい」とする考え方に基づくものです。
南を向いた天皇から見ると、太陽は左側からのぼります。太陽がのぼる方向を上位とする考え方は、江戸時代まで続きました。
欧米などでは右を上位とする考え方が根付いており、現代では日本も右上位の考え方に習っています。

男性も右前で着用するの?

洋服では、男性と女性でボタンの付け方が異なります。一説では、上流階級の女性はドレスを人に着せてもらうことが多く、ボタンホールが右側についているほうが着せやすかったからであると言われています。
男性は自分で服を着るため「右利きの場合はボタンホールが左に来る方が留めやすい」というわけです。
しかし、あくまでもボタンホールの男女差は欧米の風習で、日本のルールとは異なります。
上記でも説明したとおり、日本では身分を問わず全員が右前で着用するよう法律で定められていました。男性でも右前で着用するのは当然のことです。

浴衣は右前で着用する?

浴衣は比較的着用方法が簡単で、自分で着付けをする人も多いでしょう。浴衣でも、右前で着用するルールは同じです。
和服の種類によって変化するものではないため、振袖でも作業着のような和服でも同じと考えておきましょう。

着物の右前と左前を間違えないために注意するポイント

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着物の右前と左前は、初心者にとってややこしいものです。
どんなところに気をつければ、間違えずに済むのでしょうか?いくつかの注意点やポイントを紹介します。

自分の右手側の衿を先に肌に合わせる

着物にはいくつかの部位に名称がありますが、着付けたときに上側に来る部分を上前、下側になる部分を下前と呼びます。
「前」の意味がいまいち固定されていないため、右前と左前もどちらが正しいのか混乱してしまいますね。
右前の「前」は「最初に合わせる」という意味合いになります。つまり、左手側にある衿が前にきているのが正解ですね。

小文字のyを意識する

相手から見て、小文字のyが見えるのが右前です。左手側の衿が上に来るため、自然とアルファベット型になります。
「右前はどっちだったっけ?」と悩んだときは、首元を見てyが見えるか確認してみましょう!

右手が着物の懐に入るように着付ける

着物は、右利きの人が使いやすいようにできています。衿を合わせたとき、右手が着物の中に入るようになっていれば右前です。
実際に入れる必要はありませんが、衿の向きを見て手が入る形か確認しましょう。

向かい合う相手の右手側の衿が上とする考え方もある

自分の肌に触れるほうが前とする考え方もありますが「相手から見たときに右側が前になっている」とも考えられます。向かって右が前になっているというわけです。
わからなくなったときは「相手の右手側が前になっているか」を考えてみると判断できるでしょう。

前合わせを整えるコツとは?

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着物や浴衣を着ていると、いつの間にか前がはだけそうになっていたという経験を持つ人は多いでしょう。特に着慣れていないときや、手直しができないとどんどん着崩れてしまいます。
前合わせをきれいに整えるには、どうすればよいのでしょうか?基本的なコツを紹介します。

長襦袢をきっちり整えておく

長襦袢は着物の前合わせと異なり、だいたい喉仏のあたりまでしっかりと覆います。角度はだいたい直角になるように調整しますが、首の長さや太さ、着物の種類などできれいに見える角度は少し異なるでしょう。
ほっそりとした体型で、礼装であれば直角を意識します。ふくよかな体型の場合や、普段着着物ではやや角度をゆるくするのが一般的です。位置も喉仏よりやや下になります。

半衿が2cm程度見えるように着物の前合わせを調整する

長襦袢の衿をどのくらいに調整したかにもよりますが、半衿が2cm程度見えるように前合わせを合わせるときれいに見えます。若い人やスレンダー体型であればやや多めに半衿を見せ、
年齢を重ねるとやや少なめにするとすっきりするでしょう。

和装ブラなどで胸を補正しておく

凹凸がある体型では、着崩れの原因になります。特に衿元を整える場合、胸の補正が欠かせません。
衿元がはだけやすいと考える場合は、できるだけ胸が平坦になるように和装ブラを着用しましょう。胸を押さえつけるだけでなく、ウエスト部分をタオルなどでふくらませて補正するのも効果的です。

紐やベルトの位置を変えてみる

衿元がはだける原因の1つとして、腰紐やベルトの位置が合っていないことが考えられます。すぐに紐の位置が変わってしまい着崩れるようなら、紐の位置を変えてみましょう。
腰紐の場合はやや上の方で結ぶほうが、衿元の崩れを防げます。


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